京都の粋(すい)を感じさせる朱塗香合
この香合は洗朱(あらいしゅ)塗りの蛤(はまぐり)型。神道の鳥居や仏教美術で馴染み深い洗朱…橙色に近い明るい朱色には、威厳と床しさが感じられ、その形状は、蓋を空ける手付きをより優雅なものにしてくれます。
寸法は、お内陣用に使用する大き目のもの。明晰で完璧なしなやかさを持つ散蓮の花弁が香合の蓋を飾っており、蓋を開けた内底には鮮烈な青貝細工があしらわれています。
蓋の散蓮の花弁の際に使用される青貝と、しなやかな游(めだか)を象る青貝が、香合を使用する中で時間差に目に残り、自由に泳ぐきらめきの印象を重ねます。
使用者の動作まで計算に入れた、遊び心さえ感じられる一足抜きん出て洒脱な逸品。見惚れた上に使い惚れる、世界観を持つ香合です。
この香合を彩る蒔絵は「経産大臣認定 伝統工芸士」下出祐太郎氏の工房で施されるものです。目利きの厳しい目に晒されることで研鑽された京都の職人ならではの、繊細かつ強靭な美意識に満ちています。
■游(めだか)とは？
下出氏は、「生命が広げる小宇宙・小さなものに宿る命の象徴」としてのめだかと水紋模様をモチーフに漆芸創作を行う。作者銘が無い場合が多い寺院用の漆器の中でも、京蒔絵でめだかといえばあの人の、というように、一種の符牒としても定着している有名なモチーフ。
■香合の魅力
外と内との調和。内底のめだかの翻る尾鰭のようにも見える、蓮の花弁に施された青貝細工。ものを使う動きの中にあって始めて知覚する、重ねた印象の配置の妙や、心の揺らぎまで計算された巧みさは、単なる美術品にはない実用工芸品だけが持ち得る「美」の形。
■目を射る色彩。
稔華の手付きで蓋を開けると、内底には黒い水面を泳ぐめだか。陥るような黒の深さに、夢幻に誘う青貝のきらめきが対比も鮮やかさに焼きつく。
下出祐太郎(しもでゆうたろう)
経済産業大臣認定の伝統工芸士
京都伝統工芸専門学校教授
京都工芸繊維大学 伝統みらい研究センター特任教授
---------------------------------これまで、即位の礼や大嘗祭の神祇調度蒔絵、第61回伊勢神宮式年遷宮御神宝蒔絵、国立京都迎賓館の漆調度品プラチナ蒔絵など数多く手がけ、高台寺蒔絵や芝山細工等の漆工技術の研究、漆や文学の講演、執筆活動にも取り組む。
ロンドンの英国立ヴィクトリア＆アルバート博物館では蒔絵屏風を高く評価され、展示・講演会を行った。
| 仕様 | 木製漆塗 桐箱入 |
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| サイズ | 直径4寸(12cm) |
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| 生産国 | 日本 |
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